四季ごとに1座となりつつある登山日誌。
2020年の春は仙丈ヶ岳、夏は白馬岳、黒部源流域、秋は茶臼岳、冬は八ヶ岳。2021年は春は蝶ヶ岳、夏は白山、そして今回の秋は針ノ木岳へ。
高山は紅葉シーズンに入ったので、平日登山とはいえど人気どころに行けば人の多さに辟易するのは目に見えてるので、今回は人気のなさそうな針ノ木岳へ。日帰りでもよかったんだけど、山でゆっくり過ごす目的で今回も衣食住を背負って登った。
針ノ木岳(針ノ木雪渓ルート) 13.2km
10/5
扇沢駅(9:13)〜大沢小屋(10:18-10:35)〜のど(12:05-12:30)〜2370m最終水場(13:25-13:40)〜針ノ木峠(幕営)(14:03-15:15)〜針ノ木岳山頂(16:08-16:15)〜幕営地(17:00)
10/6
幕営地(13:25)〜大沢小屋(15:26-15:45)〜扇沢駅(16:50)
早朝に名古屋を発ち、高速道路でいつかは右車線を走りたい相方まるのデスドライブで大町へ。
扇沢の有料駐車場に止めて、駅の左脇にある登山口からスタートするが、駐車場から既に稜線が見えているので初めからクライマックス感がすごい。
しばらくはダムの整備道路を交えつつ遊歩道を歩いて行き、本物の登山口に出合い、ルートの前半は基本的にゆるやかに水平距離を稼いでいく形となる。
大沢小屋の手前で登山道脇で草をかき分ける大きな音で思わず息を潜める。姿は見えなかったものの登山道のすぐ横を動く大型動物にエンカウントして緊張が走る...
その後の相方まるは、壊れたタンバリン猿のおもちゃのように手を叩いて歩き続けていた。
大沢小屋からもゆるやかな道で、2つの沢を跨ぐようにトラバースしていくと針ノ木沢に出合う。雪のある時期はこの辺りから雪渓をひたすら詰めていく形となるが、この時期はすべて夏道で登る形となる。雪渓は、奥に見える「のど」と呼ばれる針ノ木沢のくびれの部分の上下に僅かに残るのみだった。
振り返れば爺の稜線に種池山荘がよく見えた。
白山の時の「私はもう山には登らない。私は山に許されてないないから」はどこへやら、吹いたら飛んでいってしまいそうな軽い足取りをしていた。
「のど」の手前までは左側のガレをあがって行き、「のど」は右側から巻くように通過する。
通過後の緩傾斜帯で大休止して昼食タイム。
「のど」がこのルートの最大傾斜なので、その後はやや歩きやすくなる。「喉元すぎればアツさを忘れる..」とえげつないドヤ顔でつぶやく相方まるを完璧に無視して先を急ぐ。
最終水場は、山と高原地図だと標高2370m付近のレンゲ沢源頭に記載があるが、すれ違う数名全員から「そんな水場はなかった」と言われ不安が募る。件の標高付近で向かって左へ向かう踏み跡を探しながら登っていくと記載通りの標高にしっかり存在していて給水できた。
水場で3Lの水を確保した後は、背中にズシリと感じる重量がダイレクトにスピードを落とさせる。
イケイケだった相方まるも、いつもの山に許されていないモードに戻ってしまい、上から見下ろすと悲壮感さえ漂っていた。だが、前回とは違い、苦しそうな表情を見せず、引き攣った笑顔をこちらに向けて大きくグッジョブサインをしてくる。普通に怖い。
ほどなくして針木峠に到着し幕営。どうやら、本日の針ノ木峠は僕らの貸し切りのよう。両側の見渡せる稜線上に張ってしまいたかったが、夜間は風速35mの予報だったので、少し位置を下げて風の除けれる位置に張った。
テントの中でグダついていると根っこが生えてしまいそうだったので休憩もそこそこに、山頂へと出発する。
山頂までは約1時間の道のり。人っ子ひとりおらず、貸し切りだったので全力カラオケ大会。山崎まさよし「One more time, One more chance」をキメながらドンドコ進む。
上空にはさまざまな形のレンズ雲が形成されていて不安が過ぎる。夜間の悪天予報を裏付けるものなのだろうか。
相方まるのいちばんの目的だった黒部ダムをこの目に焼き付けて、テント場に帰還。
夜間から霧雨、暴風予報で夕景は全く期待しておらず、早くもテントで沈殿をキメ込んだ。
呑みながら黙々と2人分の夕飯を用意していたが、呼ばれて外に出ると思いのほかよく焼けていた。仕事の疲れも蓄積していたのか、20時には就寝..zz
翌朝、6時に起床するとこの有様。食事をとりながら話し合って、縦走は中止した。
テントのフライを叩く雨音を子守唄に、気持ちよく2度寝。12時半に再度起床して驚きの計15時間睡眠。最近のテント泊は毎回こんな感じだが、山には寝に来ているようなものだから問題ない。
昼頃には雨も止んだようで、ガスの切れ間に山体も確認できる程度になった。下りも休憩をとりながらゆっくり歩いて、CT通りの3時間で無事に扇沢駅に到着。そうして僕たちの遅い夏休み登山は終わった。
小屋閉め後の山は何かと手間が多いけれど、人を忘れたような、寂しげな空気感が好きなんだなあと再確認した。次に山に上がるときはもう白づいているのだろうか。楽しみだ。