Almost boring

いいかんじに三十路突入

【小川山】4days for Endorphin 5.13a

前回の記録から、昼から小川山へ移動。30分そこらで着くのね。思っていたよりかなり近い。予め決めていた三峰近辺のエンドルフィン 5.13a へ向かいトライ開始。

 

Day1 2022/05/15 3try 11-15℃/55-64% BW69.5kg

アップはトップガンで済ましていたので、残り時間も少ないのでいきなりトライ。GW前からかかっているクイックドローは相変わらずそのままだった。

1.下から2ピンまでクリップしてスタート。出だしから良くわからず速攻テンション。出だしは右足ヒールトゥ+右手ガストンで、左手でクリップを試みるも安定せず。3ピンのクリップムーブは一旦飛ばして、3-4ピンのフットホールドを探って、使えるホールドを大方覚えてダウン。

2.右手ガス+右ヒールトゥでクリップを試みるも安定せず、危うく手繰り落ちするところだった。フレークに両手マッチして、下足を上げる際の振られを抑えるのがフルパワー。少しでも保持が落ちていると成功しない。3-4ピンの遠い右手のポケットを取る核心部も一応リハーサルしてみるが届く気配なし。ちーん。

3.核心部までの下部だけでもムーブを作っておこうと気合い入れてトライしたら何とか繋がった。が、振られの解除がフルパワーすぎて飛び出す余力が残らない。

 

ルートの概要は掴めた。下から2ピンまでクリップしてスタート。クラック内の小ガバを使い取り付くが、壁に入った瞬間から想像以上の傾斜を感じて面食らった。この小ガバは、某動画サイトの投稿では、左手サイド引きするのが多数のようだったが、僕は右手ガストンを選択。背中でしっかりと固めて、右足で大きく伸び上がって中間部のフレーク最下部を左手で取る。次に、すぐ右側のカチれる突起を右手でマッチ。下足を上げて、振られを抑えてから、いくつかのフットスタンスを踏み替えて、デッドの体勢を作る。ここまでが下半分のアプローチ

上半分は、遠い右上にある、ガチャ持ちポケットへデッドし、振られを抑えて、足ブラの状態からフレークに左足を上げる。そこからリップまでは遠くないが、左手カチを中継して、ややデッド気味に出ることになる。左手でリップを取ったら、足を踏み替えて、右手もリップをガストンラップ持ちして、左のヒールをかけてマントルを返して終わり。

■核心デッドで右手ポケットを取って、振られを抑えて、足ブラに。左足を手に足でフレークに上げて、リップを取るまでのシークエンスかな。リップを取ったらまず落ちないだろうし、どうせマントルを返してしまうので終了点の必要性はあまり感じない。

 

■今日は、右手ポケットを保持し、足ブラの状態からムーブを起こすことができなくて、ポケットを取ってからのシークエンスはバラせなかった。コンディションはそこそこよかったが、3ピン目のクリップポジションも決めれず、ポケットへのデッドも一度もホールドに触ることができず、完登の希望は全く見えず。様々な要素を強化する必要性を感じた。

 

Day2 2022/05/23 6try 11-14℃/53-71% BW67.5kg

前回のトライから1週間ちょっと。空いた期間はムーンボードで擬似課題を作って、ピンチと狭い足のポジションでの飛び出しを練習。振られの理論を学んで、ムーンボードで同系統の課題をトライしながら、自宅でも体幹をかなり集中的にトレーニングして2日目へ。

4.アップもなしにトライ。朝イチは体が硬い。3ピン目のクリップは、左手をフレークに飛ばして、左足を上部スタンスに送ってからクリップにしたら安定した。フレークマッチの振られで落ちた。右ガスで使っていた小ガバを、3ピンクリップ後にアンダーで持ち直してから、先に両足を上部スタンスに送ったらほとんど振られなくなって、フレークマッチまで安定した。その先は...やっぱり届かず絶望。

5.フレークマッチまではだいたい安定してきた。核心の飛び出しまで初めて繋げてみたけど、右手は空を切るのみで全く届かず。テンション後のバラシで何度かやっていると、止まらないまでも多少触れるようになってきて光明が見えた。

6.気温が上がってきて暑い。デッドで飛び出す前にフレークが滑ってきてテンションをもらった。ぶら下がっていても手が乾かない。チョークが全然乗らないレベルなのでダウン。

7.核心まで繋げて、そのまま飛び出してみたらしっかりと右手穴に届いて、そのまま振られて落ちた。テンション後のバラシでも同じ感じ。連続でポケットは取れているので、距離出しはさすがに体が覚えてきたようだ。

8.湿度が上がってきてマッチしているフレークの左手ピンチが滑って飛び出し失敗。テンションしてチョークアップすれば右手ポケットは取れて..振られて落ちる。何度やっても同じ感じだ。何が足りない?

9.さすがにヨレてポケット〜リップ〜マントルを練習。右手ポケットを良い位置で持っても、足ブラ状態からではスタートできず、フレークに左手に足をセットした状態でスタートしていた。繋げると必ず足ブラになってしまうが、どうしたものか..

 

■下部シークエンスは修正したおかげでかなり余力を持ってこなすことができるようになった。フレークの左手ピンチは、初めは小指側でラップ気味の保持して、デッドの直前あたりから親指から中指で保持を意識すると、かなり保持感が良くなった。フットスタンスの踏み替えや右手を小ガバからフレークに送る時も、カウンターバランスを過剰なほど入れてやると安定する。過剰なほどってのが大事。

■フレークの右手は、前回はカチれる部分を持っていたが、フレーク上部でラップで持てる位置に変更した。これによって飛び出しの上半身の姿勢維持はかなり楽になった。

■数字は正直で、湿度70%を超えるとデッドで飛び出す前に、左手のピンチ、特に親指部分がズレてきてしまうので、トライのコンディションはこれがひとつの指標になるだろう。

■次の課題は、右手ポケットへのデッドを止めてからの振られ止めだ。

 

Day3 2022/05/25 4try 12-16℃/55-76% BW67.4kg

中1日あけて、昼から曇り予報の微妙なコンディションのなか再び小川山へ。

10.右手ポケット取りでやっぱり振られて落ちる。

11.一瞬だけ湿度55%まで落ちたのですぐにトライした。右手ポケットを取って振られて落ちた.. けれどテンション後のバラシで初めて振られが止まった!でもやっぱりその先の足上げからのリップへ出るムーブには繋げられず。右手ポケットでぶら下がってのバラシもやっぱりできない。

12.待っていても70%以下には下がらないのでトライしてみたけれど、下からも、テンション後もマッチしているフレークが滑って何もさせてもらえない...

13.どんより曇ってきた。湿度は75%くらい。2手目から滑ってきたのですぐにダウンした。当たり前だけど、限界グレードなのでコンディションがマッチしないと希望が見えない。撤収作業をしていると16時前から雷鳴が響き出して、下山した途端に超特大の雹と豪雨だった。

 

■今日1日では何も進捗が見えなかった。

■朝イチのトライが一番まともで、それ以降は湿度のせいもあるがかなりグダついてしまった。退化している気さえもする。コンディション的に今週末がラストだと思うが、振られを止めるどころか、止めてから足上げ、リップへのデッドのシークエンスが一度も再現できていない。

■正直なところ今シーズン中の完登は難しいだろう。秋の完登に向けてになるが、週末に再訪したい気持ちと、もう今シーズンは良いんじゃないの?っていう気持ちがぶつかり合ってしんどい。仕事中も手が離れる時間には、繰り返しルートを反芻してしまって、完全に取り憑かれていた。

 

Day4 2022/05/28 5try 13-17℃/48-69% BW66.6kg

週末は知り合いが小川山に集結することもあって、結局またここに落ち着いてしまった。前日雨量が25mmほどあって染み出しが心配だったけど、濡れてたらもう今シーズンはやらなくてもいいかなって半ば諦観していた。予報では各地で真夏日となるほどで、気温はかなり上がるが湿度は最低30%とこの時期では異例の低さだった。懸念していた染み出しはそこまで酷くなく、朝イチで拭き取りと軽くチョークをつけてブラッシングしてから、いつも通りソラマメハングでアップしてからトライ開始。

14.前回のトライまではステルスC4のハイアングルを履いていたけれど、体温でシューズが温まってからのトライだとデッドの踏み込みの際にソールが撓む感覚があって、踏みまけているのが不安要素になって集中できなかった。だから今回は冬の花崗岩メインで使っているVibram Xs edge2にリソールしているハイアングルを履いてみたら、かなり飛び出しの感覚がいい!距離が出過ぎて一発目はポケット取りに失敗してしまったけど、テンション後の2回目はドンピシャで右手ポケットに嵌めれた。ほんのコンマ数秒の違いだろうけど、硬いソールのバネのおかげでデッドの滞空時間が伸びて、右手をコンタクトさせる位置を選ぶ余裕が見えた。

15.右手ポケット取りは..成功したけど、やっぱり振られが止まらない。直前にKNMR先輩に相談したことを思い出して、デッドの瞬間に体幹を絞り込むイメージと、右足を最後の最後まで残すことを意識してみる。そうしたら、あれ?止まった?テンションして何度かやってみるけど、全部振られを止めて、次のシークエンスに移れるほど右手の保持感が良い!今までは、ポケット取りの際に何とか奥までつっこんでいたけど、第二関節程度で浅持ちした方が保持感がいいことがわかった。ガチャ持ちポケットは難しい。

左足上げは、左手を内側に寄せてから、ピンチしていたところに上げるつもりだったけれど、左手ピンチの位置を変えずに手の内側に足を上げるのに変更した。かなり窮屈で、掻き込み力が必要になるけど、右手middle3で足ブラになっている時間も減らせるし、体勢も安定したまま次のムーブに移行できる。

 

16.前のトライで意識していた内容を忘れないうちにトライ。右手デッドは決まって、振られも止まった。すぐに左足を上げて、フレーク左手の内側に手に足して、思いっきり掻き込んで身体を傾斜の中に入れ込む。左手カチを中継して、リップにデッド。触れた!けど足が抜けてフォールしてしまった。いきなり繋がってしまって、気持ちが急いて掻き込みへの意識がなくなっていた..

そしてGabのところまで落ちて激突してしまった。ごめんよ。

 

17.すぐに降りて、15分後にロープを結び直してトライ。湿度も55%程度でかなり保持感は良く、ポケットへのデッドも成功して、振られも止まった。が足上げがこなせず落ちた。右手ポケットはmiddle3で第二関節に掛かるくらいなので、足ブラになるには負荷がかなり大きい。右手前腕の腱が伸ばされる感覚があったので少し休むことにした。突然湧き出たRPの可能性に気持ちが急いてしまうが、落ち着こう。大丈夫。予報ではあと1時間半は湿度が上がらないはずだ。

 

18.(RPトライ)Gabのトライをビレイしながら、湿度計をチラチラと見る。気温は15℃でかなり際どい。湿度は.. 60%前後を行ったり来たり、1時間ほど経ったところで50%台前半に下がったタイミングでトライを交代してもらう。指皮は何日も前からとっくに限界になっていて、痛みも滲出液も出ている。ここからまたコンディションは悪くなる。分かりきったことばかりを反芻していたが、不思議と緊張感は全然なかった。というか、緊張しすぎて頭がパンクしていたのかもしれない。いつも通りロープを結ぶ前に2ピンまでクリップし、登る準備をする。ビレイのセットの確認をしてから、ブロワーで指を乾かしながら集中していく。液体チョークを塗り込んで、入念に乾かしてから壁に取り付いた。トライを始めた頃は、どの一手も腹筋を絞るような感覚でなんとか出していたけど、今はどれもリラックスして出していける。そんなことを考えていたら、すでに右手のポケットのデッドが決まっていた。あれ?と思いながら、足をフレークに。左手の中継カチをチラ見して、壁に入り込みながらリップを見上げる。あまりにも近く感じる。なんでさっきはあんなに遠く感じたんだ?足主導で立ち上がり、ほとんどスタティックにリップを取って、ふと現実に返った。もう落ちれないと思うといきなり足がすくんだ。かんかん照りのリップは暖かすぎて、保持している左手がどんどんズレてくる。最終ピンのクリップは諦めて、右手もリップへ送りラップで持つ。安全に落ちるなら今だけど、マントルでは絶対に落ちない。何度かヒールをかけ直して、一番安定したポジションでしっかりと返した。

 


岩の上に立った後、指先はピリピリと痺れ、足はぶるぶると震えていて、しばらく動けなかった。その日はもちろん、しばらく現実感がなくて何だかふわふわとしていた。


決して「登れるべくして登れた」ということは全く無くて、奇跡のような完登だった。体の状態、岩のコンディション、指皮の状態、集中力、デッドポイントの精度、ホールディング、ライミングに関わるすべての変数の、どれかひとつが、少しでもズレていれば登れていなかった。多少のイレギュラーであれば、他の要素でゴリ押していけるような5.12台のルートを完登したときのような、征服感はまるでなくて、ただただ、パズルのピースがぴったりとハマったこの瞬間に登らせてもらえたと感じた。

この征服感を5.13で感じられるのが13クライマーで、僕はやっぱりまだまだ12クライマーなんだ。

 

核心は2段という意見もあるけれど、自分の限界グレード(初二段)以上をこの時期に登れることは考えにくいので、それはないと思う。どっかぶりのダイナミックムーブという自分の得意系を加味しても、今まで登ったどの初段よりも難しく感じたけど、コンディションの差も考慮しなければならない。総じて、自分の感覚としては、初段という最も幅広いグレーディングの中には収まっているとは思う。

 

思わぬ完登で時間ができたので、下でボルダーで遊んでいるメンバーと合流して、そのまま2日目も同行させてもらった。当たり前なんだけど、5.13aを登ったからといって、いきなり強くなるわけじゃないし、ふわふわとした気持ちのまま、皆の楽しい雰囲気に身を任せて登っていたら、3級や4級にも敗退したりして、なんだか可笑しかった。

 

最後に、トライする機会を与えてくれて、的確なアドバイスまでしていただいたKNMR先輩、自分の登りを捨ててまで長時間のビレイに付き合ってくれたサエ、ストレスないビレイでRPトライに送り出してくれたGabriel、みんな本当にありがとうございました。

 

しばらくはボルダーで初段の完登数を増やしながら二段に挑戦して、次は持久系の5.13aにトライする。次の鳳来シーズンに向けてがんばっていこう。

 

<成果>

エンドルフィン 5.13a RP (通算18try/4day)

梅雨前のコンディション

エンドルフィン 5.13a

使用したフットホールド

中間部のフレーク

右手でデッドポイントするポケット