相方まるの南八ヶ岳童貞卒業のためにワンデイでいろいろ歩いてきた。
いつも通りちんたらと林道を歩いてもいいんだけど、日帰りの貴重な時間を往復の林道歩きに使うのは勿体無い。そこで、行きに御小屋尾根で阿弥陀岳に登って、赤岳まで縦走して、行者小屋から南沢と林道で下山するルートを描いてみた。
八ヶ岳最高峰の赤岳だけではなくて中岳も阿弥陀岳も踏める、南八ヶ岳のよくばりセットだ。
ルート、行程など
阿弥陀岳、赤岳ピークハント 18.4km 11h15m
美濃戸口(5:35)〜登山口(6:00)〜御小屋山(7:30-7:45)〜阿弥陀岳(10:40-10:45)〜中岳のコル(11:20-11:30)〜赤岳(12:50)〜赤岳天望荘(13:20-13:45)〜行者小屋(14:30-14:40)〜美濃戸口(16:50)
なだらかな御小屋尾根を往く
5時半ごろに美濃戸口の駐車場に到着、気温は-1℃だったのでベースレイヤーにミレーのうすうすフリースを重ねてヘッデンスタート。まずは御小屋尾根登山口まで美濃戸別荘地内の舗装路を30分ほど歩く。
登山口は御小屋尾根のまさに末端部といった感じで、舗装路が切れるとそのまま尾根に乗り、ひたすら幅の広い尾根道を進んでいく。高気圧が広がる予報だったので、雲ひとつ無いキャンバスのような空に段々と色彩を得ていく様が素晴らしかった。
御小屋尾根ルートは小屋もなく水場も1箇所のみなので、赤岳鉱泉や行者小屋方面のルートに比べると人気がなくマイナーな登山道だが、基本的にひたすら尾根を辿っていくだけだし、真新しいピンクテープでマーキングされているので道迷いの心配はなさそう。
御小屋山のピークまでは基本的になだらかな道が続くのでとっても気持ち良い。
山座同定能力がクソなので全然分からないけど、アレが10月末に登った南アルプスだと思う。知らんけど。
(ほら読めよ)(土下座)
御小屋山ピークの手前で美濃戸山荘・赤岳山荘方面へと降りていくピンクテープがあった。どこに通じているのだろうか...
御小屋山で15分ほど休憩。
相方まるは腹の調子があまりよくないようで早くもグズりだしている。まだまだ全行程の1/5しか進んでいないのにすでに雲行きが怪しい。またも喧嘩による途中撤退となってしまうのか。いや、それは避けねばならぬ。おれは持てる全てのホスピタリティ精神を動員させて、機嫌を回復させるべく動くことを心に決めた。
このルート唯一の水場は、看板から5分ほど下ったところにある不動清水のみだが、水1Lとお湯700mlを担いできているのでここでの補給はなし。
下界は紅葉のピークなようで、後ろを振りかえれば紅葉の絨毯の上で月が心残りに光っていた。
標高2300m付近からちらほらと雪が出てきたが、雪上歩行の練習のためにチェーンやアイゼンは付けずに登ってもらった。結局、全行程通してそれらが必要となることはなかった。
このあたりから斜度が上がってくるのとは逆に、相方まるの機嫌は徐々に悪くなっていったが、少し距離を離して登り続けた。触らぬ神には祟りなし、と言うことを学んだおれのファインプレーだ。
阿弥陀岳の姿を捕らえる
阿弥陀岳がドーンと見えるあたりの広場で15分ほどの休憩を取って、相方の機嫌の回復に努めた。担いできたお湯でこさえたキャラメル・マキアートを相方まるに渡すと、すぐに上機嫌となった。戦略的スイーツ。スイーツは世界を救う。単純な話である。こうして戦乱の世はキャラメル・マキアート将軍により治められた。
ここで鉱泉から来たひとりの登山者とすれ違った以外は、阿弥陀岳山頂まで人との出会いは無し。その人も、今日初めて人と会ったよーって。
標高2600mあたりから景色がひらけてきてテンションが上がる。
稜線上の雪はほとんど風に飛ばされていた。
機嫌を取り戻した相方まるは強い足取りで一歩一歩進んでいった。
その背中はとても勇ましく思えた。
摩利支天までの梯子やロープもしっかりと出ていたので特に問題はなかった。
摩利支天直下の西陵の岩場がかっこいー。日本離れした風景に圧倒された。
摩利支天(西ノ肩)と阿弥陀岳山頂。
阿弥陀岳は急峻なイメージの山だけど山頂は意外とのっぺり系。
阿弥陀奥壁と南陵、遠景に富士山。
奥壁は今となってはアイスのルートとなってしまったけど大昔は無雪期も登られていたらしい。行ってみたいなー。
登ってきた御小屋尾根を振り返る。末端から歩いてきたと思うと感慨深いな。
向かって左から中央アルプス、御嶽山、乗鞍、北アルプスまでくっきり。ゴタテはよく分からんかったけど心の目で見たら見えそうだったw
摩利支天へ続くリッジが中央陵?
冬のためにしっかり概念把握したかったけどよく分からなかった。
摩利支天は南側を巻いてから、クサリと梯子で少し降りる。
後は山頂までなだらかな道をスキップで。
相方まるはすっかり機嫌を取り戻したようだ。
山頂は多くの登山者で賑わっていたが、中岳のコルへの下降で渋滞したくないので写真だけ撮ってすぐに通過。
中岳を経由して赤岳までの縦走路を歩く
中岳から赤岳、赤岳から地蔵尾根で行者小屋とこれから歩くルートが目の前で全部確認できて、ちょー気持ちがいい。
中岳のコルから赤岳までの登り返しは写真で見ると強烈だけど、実際は大したことない。懸念していた岩場の下降は、相方は足の置き方も雪上歩行もめちゃくちゃ上手くなっていて杞憂に終わった。
阿弥陀岳を振り返っては見惚れてしまう。
向かって左に延びる尾根が南陵で、右側が北陵。四方に延びる、性格の違う尾根のジャンクションのような山容がたまらなく美しいな。
目指す赤岳。3つのピークは向かって左から北峰、南峰、竜頭峰。
左側のショルダーの下で、北峰へと至るのが主稜。去年は撤退してしまったので今年こそは山頂へ突き上げたい。中央の南峰直下にある、ピラミダルな岩壁の左側を登るルートが南峰リッジ中央陵かな。
爆風を一心に浴び続け、粛々と登り返していく。
山頂付近の岩場は何度来てもビッグサンダーマウンテンっぽい。
山頂標識がだいぶ斜に構えてるけど大丈夫か?
最後の休憩を入れたかったが爆風がものすごいので、展望荘まで一旦降りてから休むことにした。展望荘までの下降も、地蔵尾根も、所々に凍結はあったけど足場を選んで降りていけば問題なかった。
地蔵尾根で行者小屋まで高度を下げる
展望荘で休憩後に眼下の行者小屋まで地蔵尾根をひた降りる。上部は鎖の多いキレたルートだけど、下半は癒しの尾根に切り替わる。
西陽に照らされた赤岳を背に帰路へ
行者小屋に降りてきた頃には、まだ14時半だと言うのに、赤岳の西壁が西陽に照らされていて美しかった。鉱泉まで足を伸ばして、カフェでオヤツを食べてから帰りの林道はヘッデン下山でもいいね、なんて話していたが下山後のお風呂とマクドを思う気持ちが強すぎて直帰が決まった。
一服していると、ジーパン姿に軽登山靴、木の枝をストック代わりにした若い3人組が来て、この時間から赤岳に登ろうとしていてヒヤヒヤしたけど、最終的に諦めて戻っていった。正月はこの小屋やってるらしいし年末にリベンジ来ようぜ!と話しており、なんだかなぁとは思ったけど山を舐めるなオジサンにはなりたくないし、疲れたし、静観した。
美濃戸までは南沢を使ったが、ところどころ台風の爪痕を感じるような崩壊があったものの通行に支障はなくて、整備して下さった関係各位に感謝しつつ下りた。
相方まるの南八ヶ岳デビューということで、概念を把握できて、人気の赤岳を踏めるルートを選んでみたけど、雪付きの状態や体力面での不安もあった。結局どれも杞憂に終わって、最高の景色と歩きを堪能できてコスパの良い登山だったな、と思う。