山中暦日

山を登るという行為ははじめから無用、徒労の営為なのである。しかし、山で呑むビールはめっちゃウマい。

錫杖岳 注文の多い料理店

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木田さん、クロさんと憧れの錫杖岳、烏帽子岩前衛フェース北沢側フランケ「注文の多い料理店」へ。名前なげ〜。

不安定な天候のこの頃だったが、気圧の谷の通過で午前中だけは雨に降られないと目論んで暗いうちからアプローチ、登攀中は晴天でアクシデントなくトップアウト、下山した瞬間に土砂降りというまさに計画通りな1日だった。
 

烏帽子岩前衛フェース北沢側フランケ「注文の多い料理店

中尾高原口駐車場(5:15)〜クリヤ谷登山口(5:20)〜錫杖沢出合(6:35-6:40)〜取り付き(7:40)〜登攀(8:25-12:20)〜取り付き(13:10-13:45)〜駐車場(15:20)

アプローチ

中尾高原口に前泊し、4時半に起床してスタート。

槍見温泉裏の登山口から、一般道にしては荒れている笠ヶ岳のクリヤ谷ルートを進む。渡渉は一般道で1回のみ。懸念していた台風による増水で渡渉困難ということもなく、飛び石を飛んで渡った。錫杖沢に関してはほとんど流れておらず。

 

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1時間ほど進んだところで烏帽子岩の前衛フェースが見えてくる。
向かって左に見切れているのが本峰。僕と木田さんは初めての錫杖なのでおのぼりさんのようにはしゃぎまくる。
 

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前衛フェースをアップ

前衛フェースは高低差300m弱の硬い安山岩の壁で、分かりやすい3つのルンゼでフェースが分けられている。メインは左端の第1フェースで左方カンテなど有名クラシックルートがある。

前衛フェースが見えたあとは10分ほど進むとで左側に分かりやすい踏み跡(1450m付近)が現れるので降りていく。錫杖沢出合に出るのでクリヤ谷を対岸へ渡り、踏み跡を辿る。

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前衛フェース基部

北沢右側の踏み跡のある急登で基部まで上がると左方カンテの取り付きあたりに出る。ここから左方向にトラバースし北沢のガレを詰めていくと、北沢側フランケの基部に出る。

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取り付きで登攀準備。奥のルンゼは「見張り塔からずっと」の1ピッチ目。

今回のルートは右側に見える壁の顕著なコーナークラックを辿っていくNP主体のルート、各終了店にはボルトが打ってある。

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クロさんは2回目ということで、木田さんと僕でリードをやって良いと言ってくださったので、木田さんが1・2・5ピッチ、僕が核心をやりたいとわがままを言って3・4ピッチ(トポ上では3ピッチ40mを地蔵テラスで切る)をリードさせてもらえることに。トポ等は新版・日本の岩場(下)を参考に。
 

注文の多い料理店に取り付く 

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・1ピッチ目 30m Ⅳ フォロー
階段状のフェースを適当に草付きテラスまで登る。プロテクションは取りにくいと聞いていたが、小さめのカムである程度は取れるようだった。草付きテラスは安定していて5人程度は立てる広さがある。

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草付きテラスから取り付きを見下ろす。

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・2ピッチ目 20m 5.8 フォロー
草付きテラスから左にトラバースし、左上するクラックを辿り、枯れ木テラスの下から直上する。トラバース後、クラックに身体を入れ込んでしまうと行き詰まるので外に身体を出して上がる。左上しすぎるとフォローが回収でえげつないトラバースをすることになるので注意。トラバースにビビリ散らす僕に対して爆笑し続ける木田さんのドSっぷりが垣間見えるピッチだった。

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枯れ木テラス

終了点の枯れ木テラスは2人が限界の狭いテラス。枯れ木はない。

 

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・3ピッチ目 15m 5.8 リード

汚いフィックスの残置があった。クラック内にも#5が残置されている。

出だしは、ルート全体における核心のルーフクラックのあるハング越え。2歩上がってクラック基部に#3、出口あたりで#4が効く。クラックはフィストサイズでバチ効きするので、フットホールドを探し、身体を出して傾斜を殺しながら右に2歩出て、抜け口のハンドを取れれば終わり。

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核心のハング越え(懸垂下降時に撮影)

ムーブ自体は確かに5.8だけど、初見のリードでビビリが入り、身体が大きいのもあってルーフ下で身体が詰まってしまい消耗した。本当に落ちるかと思ったし、下で木田さんが「あんだけ詰まったらもうダメだな..」って言ってるのが聞こえて、根性と気合いでなんとか越えた。その後は地蔵テラスまで気持ちいいワイドクラックが続く。

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地蔵テラスに座る

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カムは#4,5,6を使用。ハング越えた後にも#5が残置されている。僕の#5もセット後に歩いてしまって、スタックしかけてヒヤヒヤ。木田さんにフォローで回収してもらった。ご迷惑おかけしました。

次のピッチもリンクできるけど、疲れたので地蔵テラスで一旦切る。ひとりが座れる程度の狭いテラスだけどボルトはしっかりと打ってあるので、ちょこんと座ってビレイ。

 

・4ピッチ目 5.8 25m リード

このピッチも出だしは小ハングを越えていくが、レイバックがよく効くので迷わずいける。ハング越える前に#4を噛ませる。下部はフィストが決まらない広さ、#5が決まらなくなる辺りから徐々に広がり上部はOWサイズに。

#6も持っていたがクラック内がガタガタで、片効きになるのでセットは諦めてややランナウト。探せば、OW内部の小さいクラックにマイクロが入りそうだが、ワイド登りしていけば落ちない。

クラックをハングの下まで行くと行き止まり。ここで#3がバチ効きするので、ホッと一息ついて水平テラスへ右にトラバース。 

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ここまで上がると行き止まり。

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流れは悪くなってしまうが、トラバース前の#3には両方のロープを通すべきだった。

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木田さん

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クロさん

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テラスから中央稜、南峰方面を望む
 

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水平テラスは5人くらいは立てそうな安定したテラスだった。
 

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・5ピッチ目 40m 5.8 フォロー
テラス横のコーナーからハンドとフィンガーのダブルクラックを辿り、草付きに出たら右側のスラブに乗りうつる。クラックは手も足もジャムがバチ効きなのでグイグイ高度を上げられて気持ちがよかった。スラブの最後の乗っ越しで何故かペツルボルトが1箇所だけ打たれている。

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終了点は安定したテラスで、左方カンテルートと合流し、登攀終了。一応この上も1(2?)ピッチあるが、ほとんど歩きのようなピッチで登らないことが多いそう。 

 

懸垂下降で基部に降りる

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下降は50mダブル連結で5P終了点→水平テラス→草付きテラスと計3回で基部まで。
ロープをテラスに置いたままダウンさせると小石を雨のように降らせてしまうので、後続がいる場合はトップが落としながら降りた方が良い。
 

NPについて

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持ち込んだNPはパーティ全体でマイクロカム1セット、#.4〜#6まで2セット、ナッツ1セットだったが#6はほとんど使っていない。#5は2個あると安心して使い切れるのであった方がいい。終了点をNPで作らないのであれば、マイクロカムやナッツの使用機会はほとんど無さそう。
 
錫杖に対してcleanなイメージを持っていた僕にとって、カムやフィックスまで残置が多すぎるのが少々残念だったが、それを差し引いても思い出に残る登攀だった。
まだまだ未熟な僕を連れて行ってくださったおふたりに感謝です。
 

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