Almost boring

いいかんじに三十路突入

【北アルプス】西穂高岳 − 奥穂高岳縦走

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奥穂高岳側から望むジャンダルム

 

 

こんちわわ。

先週の海の日三連休の有名山はエグいぐらい激混みだったようでtwitter片手にすげ〜(ドン引き)と眺めていた。

そんな僕は連休を1日ズラして、国内の一般登山道で最難関と言われいる穂高連峰の縦走路を歩いてきた。金曜日に新穂高ロープウェイ西穂高岳に入山し幕営、翌土曜日に奥穂高岳まで縦走してそのまま白出沢ルートでスピード下山。

ルート、行程など

・1日目

【西穂高口 ▶︎ 西穂山荘】2.0km 活動時間49分

西穂高口(千石平)(15:57) - 西穂山荘(16:46)

 

・2日目
【西穂山荘 ▶︎ 西穂高岳山頂 ▶︎ ジャンダルム ▶︎ 奥穂高岳山頂 ▶︎新穂高温泉駅】14.7km 活動時間15時間53分

西穂山荘(03:36) - 西穂丸山(03:48) - 西穂独標(04:23) - 西穂山頂(05:36) - 間ノ岳(07:10) - 天狗ノ頭(08:25) - 天狗岩(08:29) - ジャンダルム(11:09) - 奥穂高岳山頂(13:12) - 穂高岳山荘(14:00) - キャンプ場(15:09) - 白出小屋(18:11) - 穂高平避難小屋(18:42) - 新穂高温泉駅(19:29)

 


前述したように岩陵を10時間ほど登降し続けるルートなので軽量装備が望まれる。

しかし、衣食住を背負って山を歩くのが縦走のロマンだと思っているので今回もテン泊で。38Lザックに無理矢理パッキングしていったのでかさ張ったザックを岩に引っ掛けるような危ない場面はなかったが、重量はしっかりテン泊装備分ありそこそこ脚にきた。


当日は滑落事故について耳にすることはなかったが、前日は稜線上をレスキューヘリが旋回していたので事故があったのかもしれない。僕の歩いた日は天候に恵まれたため、危ない思いをすることはなかったが、荒天時は自分の実力では危険どころか踏破は不可能と言っても過言ではないという印象だった。

 

初日は西穂山荘まで

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16時発の最終便に間に合うよう向かったつもりだったが、運良く一本先の便に滑り込めたので西穂高口の駅に16時に到着。天候はご覧の有様。

 

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西穂山荘までコースタイムで1時間ほど。不快指数3000くらいの中、汗をダラダラ流しながら樹林帯を歩く。山荘に到着する手前で高齢の方々のパーティを追い越した以外はほとんど人に会わず。

テント場の受付をして設営、飯、ビールと流れるほど軽やかに山の酔っ払いへと変貌。

 

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隣のテントのイビキがうるさすぎて全然眠れず...

ビールをモリモリ飲んではカメラをいじったりして24時ごろ就寝。

 

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火星と天の川のコラボレーション。

2時半起床なので仮眠程度の睡眠になってしまったが、テントの撤収前にコーヒーを淹れて身体のスイッチを切り替えていく。朝食はセブンのあまり美味しくないチョコマフィンと美味しいメロンパン。

 

日の出を待たずにスタート

3時30分ごろにヘッデンをつけて西穂山荘を出発。これでも早い方のスタートかと思っていたけれど、先行者のヘッデンの光が遥か先で揺れていた。隣のテントは2時ごろスタートしていたような?

 

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ヘッデンで照らされた場所以外は真っ黒な山塊があるばかり。

穂高連峰の稜線に乗る

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独標手前で空が白け始める。ソフトシェルを着て歩き始めたが、汗ばむ程度の気温だったので速攻で脱いだ。

 

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明神岳の向こうには朝焼けと雲海が。

 

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そんなこんなで独標(11峰)に到達。ここまではお散歩レベル。

 

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10峰。

 

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焼ける焼岳。

まだ暗い時にヘッデンの明かりが見えていたけど、そんな早い時間から焼岳に登る人ってどこに向かうのだろう?

 

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ピラミッドピーク(8峰)へ到達。

まだまだお散歩レベルの道なのでモリモリ進んでいく。

相変わらず空が幻想的なのでついつい立ち止まって写真を撮ってしまう。

 

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6峰!!稜線がずっと先まで見渡すことができるので期待に胸がふっくら。

 

西穂高岳主峰からバリエーションルートへ

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そして主峰へ到達。太陽もしっかり上がった。

西穂山荘を出てから約2時間。ここからは地図上で点線となっているバリエーションルート。危険箇所も多いため、長めに休憩を取る。直線距離では縦走路の半分ほどまで来たが、ここからゴール地点までのコースタイムが8時間ほどある。

 

赤石岳間ノ岳を超えて間天のコルへ 

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下降してからP1や赤石岳などを含む4つのピークを越えて間ノ岳を目指す。

見える位置に先行者がひとり。ナイフリッジや壁に張り付きながらトラバースしていくが、間ノ岳に取り付いてからの浮石地獄がなによりもウザかった...

 

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間ノ岳へ到着。標識などはなく岩に直接 間ノ岳と書かれている。

北岳の横にある間ノ岳とは同名峰。ここからは間天のコルまで下降していく。

 

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間天のコルを見下ろし、正面には天狗の頭を望む。

 

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来た道を振り返る。間ノ岳からの降下はほぼ垂直でシビれる。

 

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間ノ岳からの下降路をズーム。

アンザイレンで進むパーティが見える。基本的にコンテだった。

 

逆層スラブから天狗の頭を越える 

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天狗の頭への取り付きは逆層スラブと呼ばれるセクションがある。逆層スラブはクサリが付いている箇所も多いが、晴天であればシューズのグリップを信じてゴリゴリ登っていける。滑ったら死ぬのでシューズとの友情を信じましょう。

雨などで濡れている場合は大人しくここで引き返すのが賢明。

 

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間天のコルからは逆層スラブを軽快に上がっていき、ナイフリッジを超えていく。

 

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天狗岩(天狗の頭)に到達。スタートからは5時間ほど。

ここまで来ると怖いという感覚が麻痺してくるが、気を抜かないよう集中していく。

 

天狗の頭から天狗のコルまで一気に降りる

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天狗のコルまで一気に高度を下げるので垂直のクライムダウンが続く。

 

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天狗のコルには唯一のエスケープルートがある。

天狗沢を経由して岳沢小屋へと続くルートだが一般的なルートではないため、整備も行き届いておらず相当ザレている。岳沢方面から強い1パーティが上がってきた。上高地から奥穂へはこのルートが最短となる。

 

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天狗のコルの標識。ここまでで6時間ほど。

ここからはジャンダルムまで1.5〜2時間ほど畳岩と呼ばれる大きな一枚岩の急な岩峰を登り、高度を上げていく。

この先にはジャンダルム、馬ノ背、奥穂高岳と主役たちが待ち構えている。

 

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山岳ガイドを含む3人のパーティ。

ガイドはザイル持ちながら片手でモリモリ登っていく。

 

天使の待つジャンダルムへ

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畳岩尾根の頭と呼ばれる急斜面のセクションを終えるとジャンダルムの取り付きが見えてくる。奥穂側から見るとマジでこんなところ登れンのかよ感がすごいけど、西穂側からならどこからでも登れそう。

写真左側にいるパーティのように、飛騨側に巻いていくのが正解。

 

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渋滞もなくジャンに登頂し天使にご対面。

当日は昼にかけて雨〜雷雨の可能性もあると気象予報士でもある西穂山荘オーナーからの助言があったが、晴れ間から奥穂高の山頂が顔を出していた。

 

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ジャンダルムは登りと同じルートで下り、信州側をトラバースして先へと向かう。

ここまでくると一般道からジャンに向かう登山客がいきなり増える。

ジャンは奥穂側から見るのがやっぱりかっこいい。頂上に人がいるのが見える。

 

総本山に見守られ ゴールへ向かう

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先に見えているのがロバの耳。

ロバの耳までは、飛騨側に切れたった崖上のエグいトラバースがあるがクサリがついてるので安心。ここだけはアンザイレンで確保しながら通過するパーティもいた。

 

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ロバの耳を振り返って。

そのまま現代アートとして使えそうなほどの造形美。

ここも飛騨側から巻く。

 

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残すは馬ノ背、奥に見えるは奥穂高岳山頂。

岩峰である穂高of穂高な感じがgood。奥穂高岳穂高連峰の総本山であるのも頷ける巨大で堂々たる山容。

 

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馬ノ背とは、言葉のごとく馬の背中のように両側がすっぱりと切れ落ちたナイフリッジ。幅は1mもない。標識がなければこんなところを登っていくとは思いもしないだろうが、強烈な見た目に反して難易度はそう高くない。スペースが狭すぎて足や手をかける位置は自然と決まってしまう。スタンスやホールドが浮石ではない事を確認しながら慎重に進む。

 

写真ようなキレのいいナイフリッジを過ぎた後もゆるい感じの馬ノ背が続く。遮るものがなく風が強かった。突風に煽られバランスを崩すと1000m以上滑落するので、余裕があったとしても耐風姿勢をとりながら歩く方がベター。

 

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奥穂高岳山頂直下より振り返る。向かって左から馬ノ背、ロバの耳、ジャンダルムと圧巻の岩稜。シビれる〜

 

縦走路の終点、奥穂高岳山頂を踏む

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西穂山荘から11時間半、14時に奥穂高岳山頂に到達。休憩を多めに取ったものの、シャリバテか脱水のような症状が出て後半はかなりペースが落ちてしまった。道中に出会い同行したYさんにアミノバイタルなど頂いた。

 

山頂では疲れ果ててこの表情。

いや〜感無量。

 

白出のコルまで降りて 穂高岳山荘で大休止 

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下山というまだまだ長い行程が続くが、穂高岳山荘で遅い昼食をとるために下っていく。ここで怪我をしてはシャレにならないのでカレーのことだけを考えて集中して降りていく。

 

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カレーのことをずっと考えていたはずなのにナゼかラーメンを頼んでいた。疲れかな。

ラーメンが体に染み渡るような感覚が何物にも代えがたい幸福感を生み出す。

 

同日の西→奥方面の縦走者は15人ほどだったが、4人の方々と終始同じようなペースで奥穂高山荘まで一緒に歩かせていただいた。コースタイム12時間でワンミス即死という厳しいルートだが、パーティ山行のように声を掛け合いながら歩けたので精神的に救われた。このルートを終始笑顔で歩けるとは想像もしてなかった。

 

山荘で食事をした後は、山荘に残る人、そのまま北穂まで向かう人、下山する人(僕)とみな違う方向へと進んだ。

山での出会いはプライスレスである。

 

標高差2000mを下る長い下山

さて、ここからはクソほど退屈で何も面白くない上に死ぬほど浮石に気をつかい続ける地獄の下山タイム。何が何でも明日までに名古屋に帰らなきゃならないのだ。

 

白出沢ルートでの標準コースタイムは6時間ほどだが、4時間半もあれば下れるだろうと考えた。また白出沢・鉱石沢・岩切道の危険箇所は陽のあるうちに通過できると考え、15時半に下山開始した。

 

いやらしくガレた白出沢

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結構な斜度がある上に、とにかくガレているのでかなり集中力が必要でとにかく疲れた。5コケした。

 

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16時ごろ、アビナイヨ岩を通過。

 

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ある程度下って行くと雪渓が残っており、天然のクーラーかのような冷気があがっていた。雪渓の下からは比較的大きな音の水流の音が聞こえており、雪渓の切れ目から上部を望むと雪渓はアーチ型になり大きなベルグシュルンド(空洞)が形成されているのが確認できる。雪渓には安易に立ち入らないように。

 

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とにかくルーファイが難しかった。

少しでもマークを見逃すと浮石地獄に入ってしまいペースも落ちるしコケまくる。

 

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白出沢と荷継沢の分岐地点で16時50分。

17時15分には鉱石沢の上部地点に到達。

 

鉱石沢でルーファイミスによる転倒事故 

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今回の縦走でのハイライトとなる逆層スラブや馬ノ背など、核心部と言われる箇所は多くあるが、僕にとっての核心部はこの鉱石沢だった...

 

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写真中央向かって右側の道までガレた岩場を下りていく。
沢の反対側の壁側にかつて使われていただろう道の印はあるが、崩壊しており使えないため、自身でルーファイしながら下って行く必要がある。

 

この時、ルーファイをミスし信じられないほど大きな浮石を踏場に選んでしまった。

踏み下ろした瞬間に流れる岩と共に体勢を崩しひっくり返った。岩の下敷きにならなかったのが不幸中の幸いだったがトレッキングポールはヘシ折れ、シューズの金具は外れてしまった。

 

とにかく落ち着くことを意識して、息を整えながら岩をひとつひとつ確認しながら沢の下まで降りて、顔や傷を洗ってひとつひとつ怪我を確認した。

大きな怪我もなく安堵した。

 

電波も通じない、この時間に人通りのほとんどない白出沢で夕方前に行動不能は絶望的だ。現時点で追い抜きもすれ違いも一切なく、今後も人が通りかかる事なんてまず有り得ない。

 

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その後はまさに岩を切り出して作った岩切道を進む。クサリやハシゴが多いため、挙動のひとつひとつを慎重に行動した。樹林帯へと続く重太郎橋は、先日の大雨で流されたが新たに掛けられていると他パーティから得ていた情報通りだった。

 

林道に出合う

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写真は林道から樹林帯へと逸れる白出沢出合。

樹林帯・林道は体のどこかから力がみなぎってきて猛ダッシュで下りた。四肢の先まで気が張り詰めているような不思議な感覚だった。穂高平小屋に着き、CCレモンを買って飲み干す。

 

その後、駐車場には19時半に到着し、体の隅々から力が抜けていくのを感じ、感動もひとしおだった。

結局、下山にかかった時間は4時間でコースタイムから2時間ほど巻けたが、事故は下山時に起きるという有名な言葉を体を持って感じることとなってしまった...

が、それ以上に学ぶこと・感じる事の多い良い山行になったと思う。

 

 

 

アルピニズムまたはアルピニスム(英 : alpinism、仏 : alpinisme)は、狩猟や信仰目的ではない、山に登ることそのものを目的とする遊びやスポーツとしての登山を言う。19世紀後半に生まれた語。

単なる「登山 climbing, ascension」というよりは、語源がそうであるように、アルプスのような高い技術を必要とする、高く、困難をともなう山の登山をいう。そういった登山家をアルピニスト(alpinist, alpiniste)と呼ぶ。


登山歴の浅い僕がアルピニズムに関して講釈を垂れるつもりはサラサラないけれど、自分の限界を見極めて、最大限の準備をして、そのギリギリを攻める緊張感は心地良いなと感じた。

 

 しばらくは歩きとビールを楽しむぞー。

 

 

 

【注意】今回の西穂高奥穂高岳の岩稜縦走ルートは、地図でも点線になっているバリエーションルートでアルパインライミングの要素の強いルートです。その岩稜の険しさばかりに目が行きがちですが、西穂高岳から奥穂高岳まで登降を繰り返すと、累積標高は上高地奥穂高岳山頂の標高差に匹敵すると言われています。つまるところ体力勝負な要素もとても強いルートなのです。まとめると、高山病にもなりうる3000mという標高で、時にクライミングギアやスキルを必要とされる状態で、ワンミス即死してしまう岩稜を10時間ほど集中力を維持して行動し続けなければありません。このコースからエスケープを考えるレベルの登山者では、エスケープルートである天狗沢を経由して岳沢小屋まで辿り着くのも難しいと考えてください。縦走を断念するのであれば引き返すしかないのです。以上より、少しでも不安感のある方は、クライミング経験および岩稜経験のある専門の山岳ガイドを雇うことを強くお勧めします。