Almost boring

いいかんじに三十路突入

【雑考】パキり、脊椎分離と側副靱帯部分断裂の全て

 

故障した。

ライミングは身体に悪い。いや、どのスポーツも度を越えせば身体に対しては悪影響でしかないのだが、クライミングほど腱や関節を直接外力で痛みつけるものは中々ない。そんなものは医療従事者でなくてもわかるだろうし、医師として働く自分にとっては自明の断りであった。

 

これまでも、サッカーや、自転車競技、アイスホッケー、登山、フィットネスジムに、選手として、趣味として関わる中で自身が関節弱者であることはよく分かっていたので、クライミングを始めてからもケアを人一倍、執拗なくらいしてきたつもりであった。

 

パキり

始まりは7月、左手中指のPIP関節の腫れから始まり、右手中指のA2損傷の再発。8月に入り、レストのタイミングを伸ばしてみたり、課題を選んで登ってみたりしたけど、指を庇う動きのせいか新たに左肩外転時の痛みが出てきてしまったり、過去の古傷を賑わせた。この頃はまだ気楽なもので「少しくらい休めよ」というお達しかなと思って、ボルダーの時間を制限して、しばらくはリードに専念するつもりでKo-wallやES伊那、ブルーキャニオンなんかに通った。

それで分かったことは、結局のところ「限界グレードに近くなると握り倒してしまうから、登りながら指を治すことはできない」だった。いや当たり前なんだが。

2ヶ月もだらだら登っていると流石に危機感を感じて本格的にレストを決意した。

 

急激な腰の痛み

そんな中で9月13日のランニングの後に腰に違和感を感じ、9月14日の仕事中に全く動けなくなった。本当に1人では何もできなくなってしまった。正確には、腰から背中方向に荷重のかかる全ての動作ができなくなった。寝返りを打つのも、立ち上がるのも何かに掴まって全力で力まないといけなかった。

立ちっぱなし、座りっぱなしで痛みを誤魔化して仕事に出ていたけど(実際、職場に泊まり込みだったので自宅に帰るよりも楽だった)何をするにもゆっくりとしか動けなくてストレスが溜まる。さすがに(二度目の)危機感を感じて9月18日(受傷5日目)に自身の職場でXpを撮像、整形外科の同期にすぐにLINEで画像を送り相談した。

 

で、そのままCT室に移動して撮ったのが、

これ

診断は両側L5椎弓分離症となった。

急激な痛みは傍脊柱起立筋の筋性疼痛ということで対症療法しかなく、分離自体とは今後も付き合っていかなくてはならない。

自転車競技の選手時代から腰の違和感は感じていた上に、今回ほどではなくても痛みが出ることはあったので、おそらくその頃から慢性的に経過していたのだろう。

9月20日(受傷7日目)から少しずつ歩ける様になって9月22日(受傷9日目)には違和感は残るものの、2時間だけリードで登ることができた。

 

膝の派手な破裂音でフィニッシュ

9月24日には腰に違和感を感じる程度まで改善していたので、リハビリ程度に軽めのボルダーをしようとホームに向かった。3週間ぶりのボルダーだったので4級や3級を信じられないくらい辛くも思ったけど、なんとか1本の強傾斜1級を完登してメンタルを回復した。

で、件の課題へ。

ボリュームを4点スタートし、右をスタートに手にヒールして、右手を小アンダーへ。ここからデッドで左手を出すのだが、力を込めた瞬間にバキッと大きな音が鳴った。

響くバキ音

後ろでみていたコースケまで聞こえていて、ホールドが動いたと思ったらしい。彼は当初「全部壊れちゃうじゃーん」とニヤニヤしながら軽口を叩いていたが、足を引き摺り青ざめて戻る僕に気づいて深刻そうな顔をしていた。

 

すぐに自宅に戻って保冷剤で一晩中冷やし続けたおかげか、翌日も腫れは目立たず、関節腔も膨れていなかったので半月板は無事そうで少し安心した。それでも内反負荷が少しでもかかると痛むし、急な動きには関節の不安定性を感じた。

翌日9月25日には午後休をとって整形に受診するつもりが、こういう日に限って入院ラッシュが来たりで全く仕事を抜けれず。定時すぎまで働いて、無理を言って幼馴染の整形外科クリニックで診てもらった。

 

診断は、外側側副靱帯の単独損傷、部分断裂

起始停止部は無事で、ちょうど真ん中あたりで半分くらい切れていたが首の皮一枚でつながっていた。不安定性が出る様ならオペでの縫合が必要になるが、現状は装具装用で対症療法で経過観察でよいとのことだった。少なくとも2−3ヶ月の安静が必要だが、再開後も同様の負荷がかかると断裂のリスクは高まる。

 

今回の損傷に至った経緯は、おそらく以下の通り。

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本来は内反負荷が掛かると、膝関節進展部位では股関節内反を制動する大腿筋膜張筋および腸脛靱帯が筋性のサポートに入る。しかし、股関節および膝関節90°を越えた屈曲位(いわゆる、狭い手にヒーで膝が真横を向くような状態)では筋走行が変化してしまうため、外側側副靱帯と並走しなくなる。そこで、内反負荷が外側側副靱帯単独に掛かるため、構造的に著しく脆弱となり今回の損傷に至ったのだと思われる。

 

*追記

右手がアンダーであることによって自重以上の負荷を作り出してしまっているのも1つの要因となったのだろう。現に屈曲位の狭いヒールでも、下引きできる手があれば、荷重が分散されるおかげか、これまで問題となることはなかった。

 

とか考えても何も現実は変わらず、結構落ち込んだ。

 

 

週に15時間近くも登っていたせいで、ぽっかりとできた空間を埋めることができるのか、と不安になったりもしたけど、それほどまでに視野が狭まっていたのだと自覚し、同時に強く反省した。

とりあえず、翌週にはハワイでの結婚式を兼ねて旅行も控えていた。あまりにも向こう見ずだった自身への自己嫌悪に苛まれてどうにかなってしまいそうだけど、なんとかこなすしかなかった。

 

無理を言って相談にのってくれ、診察していただいた先生方にはこの場を借りて感謝申し上げます。